青森県六ケ所村
~わが国エネルギー問題を考える~

 はじめに~わが国のエネルギー問題の現状

平成20年(2008年)の日本のエネルギー消費の構成は産業部門が4割(横ばいに推移)に対し、家庭、オフィスなどの民生部門、陸運、海運などの運輸部門のエネルギー消費量は、国民が豊かさを追求してライフスタイルを変化させたことを背景に、1970年代に比較すると大幅に増加しています。(図1)

特に、家庭におけるエネルギー消費量は、エアコン、パソコン、温水洗浄便座等の普及が拡大したために増加を続けており、また、ライフスタイルの電化が進んだことによって家庭部門の電力消費量は1970年代の5倍以上に増加しており、それに伴い電気を供給するために使われる資源の比率(電力化率)が上昇し、2008年には一次エネルギー総供給量の4割以上を占めています。(図2)

原子力発電の供給状況については別紙ご参照

部門別最終エネルギー消費の推移 一次エネルギーに占める電力の比率
そして、わが国のエネルギー自給率はわずか4%であり(食物は40%の自給率)、石油に至ってはドイツ、フランス、イタリアと同じようにほとんど輸入に頼っているのが現状です。エネルギーの供給源を見ると図3のようになっており、石油危機以後原子力など石油に代わる資源の利用に努め、エネルギー供給源の多様化が進んでいます。しかし、いまだにエネルギー供給の約半分を石油に依存している状況にあります。政情が不安定な中近東の石油に大半を依存しています。日本は厳しいエネルギー事情にあります。
エネルギー供給(資源別)

 石油、石炭、天然ガスなどは化石燃料とよんでいますが、これらの資源は有限で、CO2を発生します。鳩山元首相は2009年9月国連において主要国の積極的な推進を即する意味もあって、1990年比で2020年までにCO2を25%削減することを表明しました。したがってこれら化石燃料に大きく依存する構造から脱却する必要があります。

そのために、①省エネルギーの推進②太陽光、風力などの自然エネルギー(再生可能エネルギー)や新エネルギーの導入・開発③CO2排出量の少ない原子力の推進などが求められます。

しかし、開発コストの問題や廃棄物の処理の問題など乗り越えて行かなければならない課題がたくさんあります。(たとえば、風力発電のコストは原子力の2倍かかるといわれるし、使用済み風車の羽根の処理が意外と厄介のようです。)

 原子力見直しの動き 原子力ルネッサンス

科学ジャーナリストの中村浩美氏は次のように述べています。(「六ヶ所を考える」生産性出版)

 「わずか4%の自給率、資源の枯渇、地球温暖化対策。厳しいエネルギー事情にある日本にとって、原子力は不可欠の存在だ。

 世界的にも原子力ルネッサンスと呼ばれるほどに、その有用性に対する認識が高まり、原子力発電へのシフトが顕著だ。資源論でも環境論でも、21世紀の決め手は原子力なのだ。日本は原子力立国計画で、基幹電力として原子力を明確に位置づけ、核燃料サイクルを政策の柱としている。

 原子力はリサイクル可能なエネルギーなのだ。(図4) その中核が六ケ所村の再処理工場だ。ここで使用済みの燃料から、再利用可能なウラン、プルトニウムを取り出し、高レベル放射性廃棄物を分離する。

 日本のエネルギー政策の未来は、六ヶ所村に託されている。

原子力燃料サイクル図

(注)「MOX燃料」とは、「ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料」のことです。英語ではMixed Oxide Fuelと言い、その頭文字をとって「MOX(モックス)」と称します。
原子力発電所から出る使用済燃料を再処理すると、まだ使えるウランと燃焼の過程で生まれたプルトニウムを回収することができます。再処理工場では、プルトニウムを同量のウランと混合してMOX粉末のかたちで回収します。
MOX燃料工場では、このMOX粉末を原料にして、MOX燃料を製造します。六ケ所村でMOX燃料工場の建設に着手しています。

原子力発電推進のメリット

  • 原子力発電の燃料であるウランが石油などの化石燃料と比べてごく少ない量で発電が可能であること、.燃料の備蓄が容易なこと、一度ウラン燃料を原子炉に入れると3~4年は取り替えずに発電できること ウランがオーストラリア、カナダ、カザフスタンを始め、比較的広い地域に分布していることなど、エネルギーの供給安定性に優れています
  • 燃料リサイクル 核分裂生成物以外(97%)は再処理することにより原子力発電の燃料としてリサイクルが可能です。
  • 他の電源に比べて原子力発電の経済性が高いです(すくなくとも遜色はない)。
  • CO2の発生を抑制でき、地球温暖化防止のために果たす役割は大きいといえます。
  • 火力電力と同様原子力発電は容量も大きく基幹電力となりえます。

原子力ルネッサンスについて

  • 1979年米国スリーマイルアイルランドの原子力発電所事故、1986年のソ連チェリノブイり事件等を契機に米国に加えその他の国々においても、原子力発電所の建設が停滞していました。しかし、近年になって地球温暖化対策やエネルギー安定供給等の観点から米国、イギリス、フィンランドなどでも原子力発電所の新増設の動きが見られるようになっています。
  • さらに中国、インド、ロシアにおいてもそれぞれ20基以上建設の動きあり。新興国でも温暖化対策を背景に環境負荷の少ない原発を導入する国が増えています。トルコ、アラブ首長国連邦(韓国が4基受注)、ベトナム(2か所に2基づつ。ロシア、日本が協力)などが原発を新たに導入する計画。
  • 国際エネルギー機関(IEA)はこれまで原子力をタブー視してきましたが、2006年以来原子力の役割を評価するようになっています。

追記 2011年3月11日東日本大震災・福島原発事故発生により原子力発電をめぐる事情は一変しております

原子力発電の課題と現状

  • わが国原子力発電の現状 運転中の原子炉 2009年現在54基 発電設備容量48,847千KW 米国、フランスにつぎ世界第三位 2019年までに9基増設 2020年には42% 2030年には49%に増加する見通し(いずれも80%稼働として、全発電量に対する原子力発電の割合)
  • 課題は何と言っても安全性の確保、 安全性の技術をさらに高めていく必要があります。
  • 核燃料サイクルの確立 現在はフランス、イギリスに廃棄物の再処理を委託していますが、早く六ヶ所村で進めている再処理工場を完成させる必要があります。(目途は立っている由 2012年には完成予定)
  • 再生工場で発生する高レベル放射性廃棄物の処分の問題を解決する必要があります。地層処分とすることが決まっていますが、候補地がまだきまっていません。再処理工場を建設中の青森県六ヶ所村は、最終の高レベル放射性廃棄物処理についてはまだイエスと云っていません。
  • 要するに再処理の問題、最終廃棄物の問題すなわちバックエンドの問題についてはまだ解決していません。特にこの最終廃棄物処理の問題のことを「トイレなきマンション」というひともおります。
 わが国エネルギー問題を考える(所感)
  1. わが国は化石燃料をほとんど海外に依存していますが、化石燃料についても天然ガスの開発などわが国としてもそれなりに努力する必要があると思います。尖閣諸島に中国が積極的に侵入している現状を見るとなおさらです。コストの問題があって民間会社としては限界ある部分については政府がやるべきと思います。こうした重要な問題については大きな政府となってもやむえないと考えます。尖閣諸島に加え静岡沖、熊野灘など候補がないわけでもありません。
  2. 資源の乏しいわが国として原子力に頼らなくてはならない事情はよく理解出来ますが、電力の原子力に対する依存を50%にまで高めようとする政府の計画は、もしものことを考えるとリスクが多いと言わざるおえません。もっと電源の多様化を推進する必要があると考えます。
  3. 太陽光、風力などの自然エネルギー、バイオ燃料などは引き続き積極的に推進する必要がありますが、量に限りがあることを考えると、それらに加えることのできる新エネルギ-の開発が待たれます。
  4. 原子力発電についていえば、高レベル放射能廃棄物の処理の問題をクリアーしなければなりません。処分する候補地を2002年より探していますが、2011年時点ででまだ候補地がありません。法により民間の原子力発電環境整備機構NUMO が担当しています。あっという間に期限がきてしまいます。オーバーに言えばまったなしです。もっと政府が前面に出てきてもいいような気がいたします。いわゆるバックエンド対策の早急なる確立を望みます。
  5. 原発のバックエンドコストは、原発を動かした後に発生する、使用済み燃料の再処理やMOX燃料加工、さらに工場の解体や廃棄物処分に係る費用をいいますが、これが巨額に上っています。これが電力料金に上乗せされていますが、一般の消費者はあまり知りません。有効に活用されているか、無駄使いはないか、についてもチェックしていく必要があります。

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六ヶ所村訪問し六ヶ所村の諸施設を見学し、地元住民との交流会に参加しました。次ページをご覧ください

 

 ご参考 エネルギー資源の確認可採年数

主要な資源の確認可採年数は、石油が約46年、石炭が約119年、天然ガスが約63年であり、原子力発電の燃料であるウランは約114年となっています。

石油、石炭、天然ガスの各資源は旧ソ連、中東等限られた地域に存在しており、特に石油は約3分の2が中東地域に偏在しております。

要確認可採埋蔵量とは、現在の技術的・経済的条件の下で取り出すことが出来ると確認されている資源の量をいいます。

(出所:経産省 資源エネルギー庁2010年10月31日発行「日本の原始力発電」から)

化石燃料埋蔵量

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